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概要

news_no.106

(2)第106号 一般社団法人 全国病児保育協議会ニュース 2021年(令和3年)4月1日 近年、子ども虐待が社会的問題となり、愛着との関連が議論されている。今回、愛着形成の視点から病児保育の役割を考えるために、四人のシンポジストにご講演いただいた。 西岡は、愛着障害が見られた事例、不安定な愛着を持つ親子の事例および医療的ケア児2例の事例を報告し、一時期母親に代わって子どもの保育看護をすることは、親子にとって良い影響を与えるのではないか。病児保育室が安全であると感じられることによって愛着が形成される場になるのではないかと考察した。 次に、「虐待環境下におけるアタッチメント形成とその支援」の演題で、さいたま子どものこころクリニックの星野崇啓先生にご講演いただいた。虐待をされた子どもは、多くの場合ゆがんだアタッチメントが養育者との間で形成されている。子どもがこのアタッチメントスタイルを内的ワーキングモデルとして保育室に登場すると対応に苦慮することとなる。病児保育室での支援がどうあるべきかを考える時に、支援者がどう受け入れるか。保護者の社会的な孤立を防ぐ。部屋の中での安全な環境は重要である。親子が安心できる関係性を築くことが大切など大変示唆に富むご講演であった。 続いて、「乳幼児のアタッチメント(愛着)形成とアタッチメントに焦点を当てた保育」の演題で、社会福祉法人子どもの虐待防止センター奥山眞起子先生にご講演をいただいた。児童精神科医であったBowlby,J.のアタッチメント理論やAinsworth,M.らの子どものアタッチメント行動の型分類について詳細にお話しされ、アタッチメント障害及びスペクトラム障害など鑑別について説明された。病気という危機的状態で子どものアタッチメント行動を見ることは大切。まずは手当てをし、敏感さが大事で、子どもと向き合ってその場でのニーズを受け止めてあげる等大切な示唆をいただいた。 続いて、「病児保育利用者は愛着形成をどう考えるのか」の演題で、大川こども&内科クリニック病児保育室うさぎのママ 赤川有紀さんにご講演いただいた。全国の病児保育を利用する保護者へアンケート調査を行い、病児保育利用者は親と子の愛着形成をどう考えているのか、アンケート結果を発表された。保護者は病児保育を利用することが、負の影響を与えるとはとらえていない。病児保育が親子関係に良い影響を与えるのではないかと考察された。そして、保護者からの意見や要望を丁寧に紹介された。 講演が終わる頃、次々と質問が入ってきて、Webで多くの参加されている方々と繋がっていることを改めて実感した。 病児保育に最も重要なものは何か、短期間でも愛着形成は可能か、病児保育によって親の成長は妨げないか等の質問に対して、その時その瞬間の両者の積み重ねの時間を大切にする、普通以上に安心させてあげることが大切、家庭と社会が協同で子育てを行うという意識が大切など貴重なご回答をいただいた。最後に奥山先生にまとめていただき、病児保育において愛着形成における役割は大きいことを確認でき充実したシンポジウムであった。愛着形成と病児保育シンポジウム 1報告者/座長:西岡 敦子(医療法人社団仁泉会 西岡医院 病児保育室レインボーキッズ)シンポジスト:西岡 敦子(医療法人社団仁泉会 西岡医院病児保育室レインボーキッズ)       星野 崇啓(さいたま子どものこころクリニック)       奥山眞起子(社会福祉法人 子どもの虐待防止センター)       赤川 有紀(大川こども&内科クリニック OCFC 病児保育室うさぎのママ)