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概要

news_no.106

(6)第106号 一般社団法人 全国病児保育協議会ニュース 2021年(令和3年)4月1日 本講演の演者である園田正樹氏は、東京大学産婦人科の大学院に所属しているが、ConnectedIndustries株式会社CEO(病児保育ICT化・ネットワーク化事業代表取締役)でもある。その立場で病児保育室に特化した予約システム(あずかるこちゃん)開発や、協議会加盟施設以外の施設も含めた病児保育に関する多くの調査をしており、その結果の一部は協議会機関誌「病児保育研究」に掲載されている。そして最近では厚労省による病児保育のICT化や広域利用に関する調査に参画していて、今回の講演でこの調査の背景となる病児保育室の現状を概説し、今後の病児保育にとってICT化と広域利用を進めることが必要であると説いている。第30回研究大会講演のオンデマンド期間は終了したが、見逃したかたにはYouTubeで視聴することをお勧めする。またそれは、協議会ホームページからもリンクされていて、容易に閲覧することができる。 (https://www.youtube.com/watch?v=MkS4WNPfuqI&feature=youtu.be)。 園田氏は病児保育においてICT化と広域利用は、その事業を推進していく上で相性がいいと言う。現在、病児保育室の利用はコロナ禍によって激減しているが、僕もこういう時期だからこそ、コロナ後を見据えた病児保育室の存続のために、行政に病児保育のICT化や広域利用の必要性を説得して協力を得ながら進めていくべきだと考えている。 まずICT化については、病児保育室の予約における「キャンセル待ち連絡システム(キャンセルがあった場合、予約順に連絡して空き人数を埋めていくこと)」をしている施設は多いが、そのほとんどは電話連絡であり、インターネットを利用している施設は少ない。しかし電話ではキャンセルで定員が空いたので、次のキャンセル待ちに連絡をしても通じないことや、保護者が次の対応(保護者が休みをとる、別な人に頼む、すでに元気になり通常の保育所に行ってしまったなど)をしていて、結局、利用数が定員に満たされぬままであることが多い。そこでインターネットによる予約システムの導入が検討されるが、そのための費用を考慮すると躊躇するという施設は少なくない。それでも費用をかけて導入した施設のヒアリングによれば、利用数については期待するほど増加せず、むしろキャンセル人数が非常に増えるとされている。しかしキャンセル人数が増えても、施設にとってはキャンセル対応の時間が節約できるので本来の保育業務に専念できることや、次の予約空き情報の公開によって、新たな予約が自動的に確保され、本当に必要な利用者が利用してもらえるようになる。また病状がよくなったり悪くなったりすることがありえる小さい子を持つ利用者にとっても、気兼ねなく当日の受付締切時間まで昼夜を問わず予約やキャンセルの操作ができることはありがたい。このように費用の問題さえ解決されれば、ICT化は病児保育室の信頼性や利便性を向上させ、利用者ためのシステムとして理にかなっていると言える。 広域利用については多くの病児保育室で、立地する自治体以外の市町村の利用者の受け入れを可能としているが、利用料金の差別化をすることで制限をかけている。それは病児保育室が立地する自治体にとって、その自治体外の利用者が加算分として数えられてその分の補助金を負うことや、自治体がそこに居住する利用者を住民サービスとして優先したいという意向が背景にある。しかし行政は、病児保育を必要とする利用者が居住地を問わず、公平に享受できる子育て支援のための公共的な社会資源として捉え、より多くの人にその利用機会を与えるようにするべきである。したがって理想は、利用者が在住する自治体と、病児保育が立地する自治体との間で利用児数に相応する負担を案分することを盛り込んだ協定を結んで、利用料金についてはどの自治体の利用者でも平等であることが望ましい。病児保育を利用者ファーストとするのなら、すべての病 児保育室の空き状況をリアルタイムで容易にわかるようにすること、利用者が居住する自治体と病児保育室が立地する自治体が同じではなくても利用料金を差別しないこと、どの自治体の病児保育室でも登録や利用の書類を共通にすることが必要である。このようなことを達成させるために、県が主体となってICT化や広域利用を推進していただくことが期待される。県主導で、各自治体がそれぞれの様式の紙文書によって作成や保管されていた登録票や利用票が、共通の様式による電子化がされれば、県やすべての自治体が迅速かつ効率よくその情報を活用することができる。そして各自治体は、居住する利用者が自治体外であっても、どこの施設を何回病児保育をもっと身近に! ICT 化と広域利用の展望教 育 講 演 3    講師:園田 正樹(東京大学産科婦人科学教室)報告者/座長:荒井 宏治(荒井こどもクリニック)